巷で話題の「ショートスリープ」。
「睡眠時間を削って活動時間を増やす」
忙しい昨今、そんな考えを持つ人も多くいるのかもしれません。
しかし、生まれつき短時間睡眠でも健康を維持できる人と、
無理に睡眠時間を削っている人はまったく別物です。
自然短眠者には、
DEC2やADRB1など、
睡眠時間に関係する遺伝的特徴
も報告されています。
つまり、誰でも努力すればショートスリーパーになれる、というわけではありません。
そして現代人に多いのが、むしろその逆。
「眠りたいのに眠れない」
という悩みです。
不眠には、
・寝つくまでに時間がかかる入眠困難、
・夜中に何度も目が覚める中途覚醒、
・朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒
などがあります。
では、なぜ眠れなくなるのでしょうか?
睡眠を大きく
Process S(睡眠恒常性)と
Process C(概日リズム)
の2つの仕組みで説明します。
Process Sは、
起きているほど蓄積する「眠気の圧力」。
起きている時間が長くなるほど睡眠圧が高まり、眠ることで低下します。
この睡眠圧には、起きている時にエネルギー代謝に伴って脳内へ蓄積する
アデノシンが主に関係しています。
Process Cは、
約24時間周期で働く「体内時計」。
朝に光を浴びることで体内時計が調整され、
夜になるとメラトニンの分泌が高まり、
眠りへ向かいやすくなります。
ところが現代の生活では、
夜遅くまでスマートフォンやパソコンを見る、
夜間でも照明が明るい、
朝に太陽の光を浴びない、
就寝・起床時間が不規則……。
こうした生活が体内時計を乱していきます。
また、入眠困難で特徴的なのが
「身体は疲れているのに、頭が冴えている」
という状態です。
眠りに入るには、
覚醒を維持するシステムから睡眠を促すシステムへ
脳が切り替わる必要があります。
覚醒を安定させる重要な物質のひとつがオレキシン。
オレキシンは覚醒を維持する働きを持ち、
睡眠と覚醒の切り替えに関わっています。
本来なら夜になると覚醒が下がり、
睡眠へ移行していきます。
ところが、
仕事や人間関係などのストレスが続くと、
心理的な緊張が高まり、
寝床に入っても頭の中で考え事が止まらない。
「明日早いのに眠れない」
「また今日も眠れないかも」
そう考えるほどさらに覚醒してしまう。
眠れないことへの不安そのものが、
眠りを邪魔するという皮肉が生じてしまうのです。
一度眠りについた後も、睡眠は一定の深さではありません。
ノンレム睡眠とレム睡眠を周期的に繰り返し、
一般的には前半ほど深い睡眠が多く、
後半になるほど浅い睡眠やレム睡眠が増えていきます。
そのため睡眠の後半にあたる明け方に近づくほど
目を覚ましやすくなります。

健康な人でも
一時的に覚醒することはあります。
問題は
「目が覚めた後、眠りに戻れない」
ケースです。
時計を見て、
「あと何時間しか眠れない」
と焦る。
すると不安や緊張によって覚醒が強まり、さらに眠れなくなる。
これも、
覚醒 → 焦り → さらに覚醒
という不眠の悪循環です。
「お酒を飲むと眠れる」という人もいます。
確かにアルコールには寝つきを促す作用があります。
しかし睡眠後半の睡眠を乱し、
中途覚醒を増やすことが多くあります。
「寝つけないからお酒」という習慣が、
結果的に睡眠の質を悪化させているケースもあるのです。
・首や肩の緊張
・呼吸
・身体の冷えやほてり
・疲労
・ストレス など、
全身の状態を確認することが大切です。
睡眠は脳だけで完結しているものではなく、
自律神経、体温、ホルモン、
体内時計、精神的ストレス、
生活習慣など、
さまざまな要素が関係しています。
「眠れないから、もっと疲れればいい」
という単純なものでなく
「眠るための条件が整っている身体なのか?」
という視点が大事になってきます。
・眠れない。
・夜中に目が覚める。
・朝早く目が覚める。
これらはどれも身体からのサインかもしれません。
眠ることは、時間を失うことではありません。
脳と身体が回復し、明日を迎えるための大切な「治癒の時間」。
今一度 自分の身体と睡眠を見つめ直してみませんか?
〔樹〕